平成28年版情報通信白書 人工知能(AI)の現状と未来・(1-3)代表的な研究テーマ
出典:総務省・平成28年版情報通信白書より抜粋して、人工知能の解説用に掲載させていただいています。 第4章「ICTの進化と未来の仕事」・第二節「人工知能(AI)の現状と未来」
人工知能(AI)の現状と未来
[1]人工知能(AI)研究の進展
(3)代表的な研究テーマ
人工知能(AI・以下単にAIと表記)の代表的な研究テーマを記載したものか次の表組みである。ただし、研究テーマは多岐にわ たり、相互に関係していることから明瞭に分類することは困難であり、紙幅をふまえた便宜的なものである。また、実用化にあたっては複数の技術を組み合わせて用いられていることから、各テーマは排他的なものではない。名称 | 概要 |
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推論・探索 | 「推論」は、人間の思考過程を記号で表現し実行するものである。「探索」は、解くべき問題をコンピューターに適した形で記述し、考えられる可能性を総当たりで検討したり、階層別に検索することで正しい解を提示する。例えば、迷路を解くためには、迷路の道筋をツリー型の分岐として再構成した上でゴールにたどり着く分岐を順番に探し、ゴールに至る道を特定する。探索の手法は、ロボットなどの行動計画を、前提条件・行動・結果の3要素によって記述する「プランニング」にも用いることができる。 |
エキスパート システム |
専門分野の知識を取り込んだ上で推論することで、その分野の専門家のように振る舞うプログラムのこと。1972年にスタンフォード大学で開発された「マイシン(MYCIN)」という医療診断を支援するシステムが世界初とされる。例えば、予め定めた病気に関する情報と判断のルールに沿って質問し、得られた回答に基づいて次の質問を選択するといった過程を繰り返すことで診断結果を提示する。 その後、エキスパートシステムに保有させる知識をいかに多くするかが課題となり、1984年には一般常識を記述して知識ベースと呼ばれるデータベースを構築する取り組みである「サイクプロジェクト」が開始され、30年以上経過した現在でも続けられている。エキスパートシステムでは暗黙知などの情報を知識として整備することの困難さが課題となった。 |
機械学習 | コンピューターが数値やテキスト、画像、音声などの様々かつ大量のデータからルールや知識を自ら学習する(見つけ出す)技術のこと。例えば、消費者の一般的な購買データを大量に学習することで、消費者が購入した商品やその消費者の年齢等に適したオススメ商品を提示することが可能になる。 |
ディープ ラーニング |
ニューラルネットワークを用いた機械学習の手法の一つである。情報抽出を一層ずつ多階層にわたって行うことで、高い抽象化を実現する。従来の機械学習では、学習対象となる変数(特徴量)を人が定義する必要があった。ディープラーニングは、予測したいものに適した特徴量そのものを大量のデータから自動的に学習することができる点に違いがある。精度を上げる(ロバスト性を高める)手法と、その膨大な計算を可能にするだけのコンピューターの計算能力が重要になる。 |