平成28年版情報通信白書 人工知能(AI)の現状と未来・(2-1)人工知能を利活用した事例
出典:総務省・平成28年版情報通信白書より抜粋して、人工知能の解説用に掲載させていただいています。 第4章「ICTの進化と未来の仕事」・第二節「人工知能(AI)の現状と未来」
人工知能(AI)の現状と未来
[2]ひろがる人工知能(AI)利活用
(1)人工知能(AI)を利活用した事例
人工知能(AI・以下単にAIと表記)は、今後その実用化が着実に進展すると期待されるところであり、多様な機能が幅広い分野で 研究されている。企業が、AIを研究する組織を立ち上げる動きも盛んである。Facebookは、2013年に人工知能研究所を設立し、利用者の問いかけに対して適切な助言を提供するパーソナルデジタルアシスタント「M」などを開発している*。我が国では、ドワンゴが2014年にドワンゴ人工知能研究所を設立*、トヨタ自動車は2016年にアメリカに研究機関Toyota Research Instituteを設立しておりスタンフォード大学およびマサチューセッツ工科大学とも提携した研究に今後5年間で約10億ドルを投資すると発表した*。AIが実際のサービスにおいて果たす機能として、「識別」「予測」「実行」という大きく3種類があるとされる。それぞれの機能を利活用する場面は、製造や運送といったあらゆる産業分野に及びうる。 * Facebook社ホームページ(https://research.facebook.com/blog/facebook-ai-research-launches-partnership-program/) * ドワンゴ社ホームページ(http://dwango.co.jp/pi/ns/2014/1128/index3.html) * トヨタ自動車ホームページ(http://newsroom.toyota.co.jp/en/detail/10866787)識別 | 音声認識 | 予測 | 数値予測 | 実効 | 表現生成 |
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画像認識 | マッチング | デザイン | |||
動画認識 | 意図予測 | 行動最適化 | |||
言語解析 | ニーズ予測 | 作業の自動化 |
人工知能(AI)の発展と利活用の進化
一方で、AIを、どのような分野でどのように使用するか、あるいは使用しないかは、あくまでも人間が設定するものである。私たち人間を含む生命体は、生存を優先したり社会組織が利益の最大化を追求したりするような個体としての最終的な意思を持っているが、AIはそのような意思を持っておらず、与えられた目標に沿った解を提示する。また、そのような目標を勝手に見つけ出すような自体も当面想定されていない。したがって、実用化が期待されるそれぞれの分野において、目標を適切に定めることは人間の役割なのである。また、社会にとって有害な目的(倫理、法、社会の分野を総称してELSI(Ethical, Legal and Social Issues)と呼ばれる)で人工知能(AI)が利用されることを防止するコンセンサスを醸成するべく取組が進められている。ア ワトソン(IBM)
米IBMは、2014年に同社のAIである「ワトソン(Watson)」を事業化するため10億ドルを超える投資と2,000人規模の人材を投入すると発表しており、これまでに医療分野では過去の診断データから患者の治療方針を提示したり、銀行のコールセンター業務において問い合わせに対する適切な回答を提示したりする商用サービスを開始している。ワトソンは、第二次ブームまでの技術を主としたAIであるが、非構造化データを含む対象データを、スコアリング・アルゴリズムによって分析し、非定型の問いに対する適切な答えを提示することができる。イ Pepper(ソフトバンクロボティクス)
ソフトバンクロボティクスは、「Pepper(ペッパー)」というロボットを開発した。Pepperは、人の感情を検知するAIを搭載しており、接客などの業務に おいても導入されている。