コニファ・マメ知識:平成25年版 情報通信白書から・「スマートICT」
「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
ICTを「元気の源泉」として戦略的に活用することにより、経済成長や社会的課題の解決、安心・安全社会の実現にどのようにつながるかを展望する。「スマートICT」の進展による新たな価値の創造
スマートフォンの普及やビッグデータ・オープンデータ活用の高まりなど、ICTの新たなトレンドが新たな価値を創造し、ICTと成長に対する期待値を高めつつある状況を検証。
ICTは成長のエンジンであり、あらゆる領域に活用される万能ツールとして、経済成長戦略と社会課題解決の要の位置にある。また、インターネットの社会基盤化を背景として、高速ネットワーク、とりわけ高速モバイル通信の普及を背景としたスマートフォンの普及、クラウド化に伴うビッグデータ・オープンデータ活用の高まりなど、ICTの新たなトレンドが、大量に流通・蓄積される情報資源・データの活用をはじめとしたICTと成長に対する期待値を高めつつある。
新たなICTトレンド=「スマートICT」が生み出す日本の元気と成長
(1)ICTと経済成長 -その基本的枠組-
マクロ的視点からの要因分解
マクロ経済の観点から、経済成長の要素を見ると、労働投入、すなわち労働の量的拡大と労働の質的向上、資本投入(資本蓄積-情報資本、一般資本)に加えて、TFPと呼ばれる、労働投入や資本投入の伸びでは説明できない生産性向上効果(一般に技術革新・経営ノウハウ等の知識ストック、企業組織改革、産業構造変化等の要因が含まれると解されている)に分解される。
このうち、労働の量的拡大については、ICTを成長の原動力の中心として位置づけることは困難な面はあるものの、今後ワークスタイルの改善等による女性や高齢者の労働時間の増大を通じて、本格的に到来している我が国の少子高齢化の影響を軽減することが期待される。その一方で、我が国の経済全体の成長を加速させるためには、労働の質的向上、資本蓄積、TFP向上がポイントとなる。これらに対して、ICT投資・ICT利活用を促進することにより、その成長力基盤を底上げできる可能性がある。
成長のエンジンとしてのICT/ICT利用産業の成長×ICT産業の成長
ICTの経済成長への牽引効果を具体的に見ていこう。まず第一に、「成長のエンジンとしてのICT」としての側面がある。ICTの効果は、ICT利用産業・部門、ICT産業部門両面で生じるものと考えられる。すなわち、ICT利用産業・部門においては、情報資本投資による労働生産性の向上や、生産手法等の改善によるTFP向上に加えて、以下に述べるように、近年では様々な製品やサービスとビッグデータ活用、スマートフォン活用等が融合して、製品・サービスの高付加価値化につながっている。
他方、ICT利用部門におけるICTサービス・機器への需要の拡大は、ICT産業の技術革新・発展を促し、ICT産業部門の成長を生むという好循環を生じてきた。ICT産業部門については、我が国の成長のエンジンとして、ソフト・サービス関係部門(通信業、情報サービス業、インターネット附随サービス業等)、ハード部門(情報通信製造業等)全体で我が国経済を牽引してきたところである。まさしく、「ICT利用産業の成長×ICT産業の成長」の相乗効果によるICT投資の拡大、新産業・新サービスの創出をいかに進めるかが、ICTによる成長牽引力発揮の鍵となる。
具体的なデータ例を挙げると、ICT利用産業・部門について、日本と米国における(1)GDP成長率の寄与度分解、(2)TFP成長率の寄与度分解をすると、両国で情報資本蓄積によるGDP成長、ICT要因によるTFP成長いずれの面でも一貫してICTはプラスに貢献しており、時期により濃淡はあるものの、直近の05年-06年ではICTによる成長において米国が日本を上回っていることが確認できる。他の分析においても、我が国のICT投資は他国に比べて遅れていると指摘されているところ、これは裏返していえば、ICT投資・ICT活用により我が国の経済は成長余力が残されているということである(なお、最新の研究成果によれば、ICT投資が一般投資と比較して乗数効果が上回っているとされる)。
次に、ICT産業部門の経済成長効果をみると、平成23年のICT産業2の名目国内生産額は82.7兆円であり、全産業の9%となっており、昨年と比較して若干低下傾向であるが、依然他産業と比較して最大規模となっている。
情報通信産業 |
82.7
|
9.0%
|
電気機械(除情報通信機器) |
27.6
|
3.0%
|
輸送機械 |
48.7
|
5.3%
|
建設(除電気通信施設建設) |
51.2
|
5.6%
|
卸売 |
59.4
|
6.5%
|
小売 |
37.8
|
4.1%
|
運輸 |
39.4
|
4.3%
|
鉄鋼 |
29.4
|
3.2%
|
その他産業 |
542.6
|
59.1%
|
また、平成7年から平成23年までのICT産業の実質国内生産額及び実質GDP(平成17年価格)の推移をみると、近年は若干低下傾向にはあるものの、他産業と比較して大きく経済成長を牽引してきたことが見て取れる。
平成 7年 |
平成 8年 |
平成 9年 |
平成10年 | 平成11年 | 平成12年 | 平成13年 | 平成14年 | ||
鉄鋼 | 実質国内生産額(兆円) | 24.1 | 23.6 | 24.7 | 22.2 | 21.8 | 24.1 | 23.4 | 24.2 |
実質GDP(兆円) | 6.5 | 6.5 | 6.8 | 5.7 | 5.8 | 6.6 | 6.1 | 5.8 | |
電気機械 (除情報通信機器) |
実質国内生産額(兆円) | 24 | 25.5 | 27.9 | 26.7 | 26.3 | 28.6 | 26.5 | 25.5 |
実質GDP(兆円) | 5.2 | 5.4 | 6.1 | 6 | 6.1 | 6.7 | 5.7 | 5.8 | |
輸送機械 | 実質国内生産額(兆円) | 42 | 43.1 | 45.1 | 42.8 | 41.9 | 42.3 | 43.7 | 46.3 |
実質GDP(兆円) | 10.2 | 10 | 9.4 | 9.7 | 10.2 | 9.8 | 9.5 | 10.2 | |
建設 (電気通信施設建設) |
実質国内生産額(兆円) | 87.1 | 85.6 | 80.2 | 76.8 | 76.1 | 76.9 | 74.8 | 71.4 |
実質GDP(兆円) | 40.9 | 39.6 | 37.1 | 35.9 | 35.7 | 35.7 | 34.5 | 32.7 | |
卸売 | 実質国内生産額(兆円) | 56.4 | 57.3 | 60.4 | 60.9 | 63.1 | 60.6 | 59.5 | 60.8 |
実質GDP(兆円) | 39 | 39.5 | 41.9 | 42.2 | 43.6 | 41.8 | 40.8 | 41.5 | |
小売 | 実質国内生産額(兆円) | 39.4 | 38.3 | 37.2 | 35.4 | 34.7 | 33.6 | 34.8 | 35.8 |
実質GDP(兆円) | 28.6 | 27.6 | 26.8 | 25.2 | 24.5 | 23.5 | 23.9 | 24.2 | |
運輸 | 実質国内生産額(兆円) | 36.6 | 37.5 | 38 | 36.9 | 37 | 38.2 | 38 | 38.2 |
実質GDP(兆円) | 19.8 | 21 | 21.7 | 21.2 | 21 | 21.9 | 21.8 | 22 | |
情報通信産業 | 実質国内生産額(兆円) | 63.3 | 69 | 74 | 76.6 | 78.9 | 84.3 | 87.1 | 87.5 |
実質GDP(兆円) | 27.4 | 28.8 | 30.6 | 32.9 | 34.3 | 36.9 | 38.1 | 39 |
平成15年 | 平成16年 | 平成17年 | 平成18年 | 平成19年 | 平成20年 | 平成21年 | 平成22年 | 平成23年 | ||
鉄鋼 | 実質国内生産額(兆円) | 25 | 25.6 | 25.3 | 26.1 | 27 | 26.2 | 19.2 | 24.3 | 23.5 |
実質GDP(兆円) | 6.1 | 6 | 5.8 | 6.5 | 6.5 | 6.4 | 4.6 | 5.9 | 5.5 | |
電気機械 (除情報通信機器) |
実質国内生産額(兆円) | 28 | 30.2 | 32 | 36.5 | 38 | 37.3 | 29.1 | 35 | 33.2 |
実質GDP(兆円) | 7 | 7.9 | 8.7 | 9.8 | 10.5 | 10 | 8 | 9.9 | 9.6 | |
輸送機械 | 実質国内生産額(兆円) | 48.7 | 49.7 | 53 | 58.3 | 62.1 | 61.1 | 41.3 | 52.2 | 48.1 |
実質GDP(兆円) | 9.4 | 9.3 | 9.8 | 10.8 | 11.9 | 11.7 | 8.1 | 10 | 9.6 | |
建設 (電気通信施設建設) |
実質国内生産額(兆円) | 68.7 | 64 | 62.9 | 59.4 | 55.7 | 52.2 | 51.8 | 49.2 | 48.2 |
実質GDP(兆円) | 30.7 | 29.2 | 28.1 | 26.3 | 24.2 | 23 | 23.4 | 23.1 | 21.9 | |
卸売 | 実質国内生産額(兆円) | 61.4 | 65 | 70.7 | 67.1 | 62.7 | 60.6 | 52.3 | 53.7 | 56.6 |
実質GDP(兆円) | 41.5 | 43.9 | 47.5 | 44.6 | 41.2 | 39.3 | 34.1 | 36.4 | 37.6 | |
小売 | 実質国内生産額(兆円) | 36.8 | 37 | 36 | 34.8 | 34.5 | 34.8 | 36.1 | 36.9 | 38 |
実質GDP(兆円) | 24.4 | 24.3 | 23.2 | 22.4 | 22.1 | 22.2 | 23.3 | 24.5 | 24.9 | |
運輸 | 実質国内生産額(兆円) | 38.6 | 39.7 | 40.8 | 41.3 | 41.8 | 41.4 | 38.7 | 40.2 | 39.9 |
実質GDP(兆円) | 22.2 | 22.9 | 23.4 | 23.3 | 23.3 | 23.8 | 22 | 23 | 22.6 | |
情報通信産業 | 実質国内生産額(兆円) | 89.7 | 91.3 | 92.5 | 96 | 101 | 100.9 | 95.8 | 98.8 | 97.2 |
実質GDP(兆円) | 40.1 | 41.5 | 43.8 | 46.1 | 49 | 49.3 | 47.5 | 50.2 | 49.4 |